実務従事を活用した商店街支援

 9月の商店街研究会は、「とげぬき地蔵」で有名な巣鴨地蔵通り商店街にある巣鴨地域文化創造館にて、同研究会としては珍しく午前開始にて開催された。当日は、とげぬき地蔵の縁日の日で、商店街に多くの露店が店を出す準備をしていた。午前中の人出が多くない時間に訪れたことで、より風情を感じることができた。

 今回のテーマは、「実務従事を活用した商店街支援」、講師は鈴木隆男商店街研究会長。月例で開催される商店街研究会では、実際にその商店街を視察した上で、商店街活性化の事例を、商店街振興組合の理事長や支援を担当した診断士から講義いただくことが多いのだが、今回は少し趣向が変わっており、「中小企業診断士が、商店街を支援するために、実務従事という仕組みを活用してみる」ということがテーマだった。そういう意味では、より、診断士としてのノウハウに特化した内容ともいえる、貴重な会であった。

  実務従事とは、「各都道府県の診断協会が実施する事業で、主に企業内診断士などの診断実務に携わる機会がない者に、その機会を提供することによる資質の向上を図るもの」とある。よって、まず診断協会への申込が必要となり、春・秋のマッチング大会へ申込することが原則の手続となる。具体的な手続きの流れを、申請書類の書式の紹介とともに説明された。一連の手続が完了するのに、半年ほど要するとのことだし、マッチング大会向けにショートムービーや、プレゼン資料の作成も要するとのことなので、準備はかなり大変な印象を受けた。なお、実務従事の指導員の登録要件については、かなり細かい条件設定がなされており、なかでも「@経営コンサルティング業3年以上」という要件については、「業として経営コンサルティングを3年以上継続して行っていなければならない」とのことなので、副業を認める会社が徐々に増えてきつつあるとは言え、企業内診断士にとってはハードルが高いと感じた。

  実務従事という仕組みにおける商店街診断スケジュールは6日と決められている。初日に初回打ち合わせと商店街役員へのヒアリングを行った後、2日目に来街者・通行量の街路調査を行う。この来街者・通行量の街路調査が、企業診断には無い作業となる。この作業に一日使うので、企業診断よりも一日短いスケジュールの中で提言をまとめて行かなければならない。

  商店街診断は、「調査報告」のボリュームが大きくなることが特徴で、各参加者は、「調査報告」の部分だけでなく「提言」部分につても報告をまとめて行かなければならないということを意識した上で、診断初期の段階からスケジュールをうまく管理する必要がある。 筆者自身が初めて商店街診断に参加した際、このことをあまり意識していなかったため、調査報告のまとめにかなりの時間を費やしてしまって提言への構想着手が後手になり、後になればなるほど時間が厳しくなって大変な思いをした。2日目の来街者・通行量の街路調査から、3日目以降の報告書作成、レビュー会までは少し期間が空くので、この期間を報告書の作成だけに充てるのではなく、提言の方向性は少なくとも決める、出来れば、報告書を並行して書き進めることがよいだろう。

 診断協会の実施する実務従事という仕組みについて概略を理解することができたことと、商店街診断方法そのものを改めて俯瞰することができたことで、二重の学びがある講義であった。 実務従事は、企業内診断士が指導員となって進めるには少しハードルの高い方法ではあるが、この仕組みを活用すれば、商店街をより多くの診断士の力で支援することができる方策となり得る。また、参加する診断士に、商店街支援に興味を持つきっかけを与えることにもなるであろう。 商店街診断に関しては、商店街は圧倒的に立地に左右されるという点が特徴であり、経営資源を考える上で、ここを主軸に考えていくことが必須の条件となること。企業診断では、「強み」を活かすことで戦略を考えることが定番だと思うが、商店街診断では、どちらかというと「弱み」を無くしていく方向で戦略を考えていくという話が印象的であった。

城西支部 本間 義隆