JR中野駅南口再開発と商店街について

 商店街研究会6月の例会では、中野南口駅前商店街を訪問し、南口再開発事業組合理事長で中野南口駅前商店街前会長の吉田稔夫講講師から、JR中野駅南口再開発と商店街について中野区産業振興センターでお話をお聞きした。当時日の会員の参加者26名であった。

1.現地視察について

 JR中野駅南口に集合後、吉田理事長の案内でナカノサウステラ(再開発ビル)の中と周辺の視察を行った。中野二丁目地区市街地再開発事業は業務棟「住友不動産中野駅前ビル」と住宅棟「中野ステーションレジデンス」の2棟で構成されいる。業務棟はJR中央線に近い場所にあり、その南側が住宅棟になる。業務棟の低層階の1階から5階が商業施設「ナカノサウステラ」になるが、業務棟と住宅棟は、ペデストリアンデッキで結ばれていて、その1階にくら寿司、ココカラファイン(ノイビル出店)、ミネドラック、京樽、ファミリーマート(ノイビル出店)、2階にセブンイレブン、吉野家、かつ丼のかつや(ノイビル出店)、喫茶ルノアール、ポニークリーニングや医療機関が出店している。業務棟2階の北側の最も通行量が多く目立つ場所に住友不動産の中野営業所が出店していて、吉田理事長は、最も避けたかったと考えている。住宅棟の東側に広場と公園があり、この広場でテントを張りマルシェ等の開催を考えている。
南口から東の千光通りへ向かうと勾配のある上り坂になっていて、これを解消するため業務棟にはエスカレーターが、設置されているがこの動力となる電気代は、中野区が負担している。住宅層の東側には、公園と広場が設置されていて、将来的にはここでイベントを行う予定である。

2.講師と初回の再開発について

 業務棟と住宅棟の視察後、講演会場である中野区産業振興センターへ移動する。   講師の吉田再開発事業組合理事長は、中野南口で父親の代から「やえがき」という飲食店を経営していた2代目になる。大変人気の酒場で1日一升瓶100本を開けたそうである。平成3年、南口の36店舗が集まり、中野商業協同組合を作り、20数名の権利者と再開発ビルのノイビルを建設する。所有は共有部分を大きくとった共有床で所有して、床を分けて利用した。

3.南口の2回目の再開発について

 今回の再開発では、商業床を管理するため南口再開発事業組合が作られ、吉田講師が理事長になり、商店会会長は、再開発との利益相反の可能性があるため、志村副会長が会長に就任し、新旧の会長で事業を進めることになった。志村会長は、新規出店店の商店会加入を勧めている。 

 中央線に面した場所に東京都の住宅供給公社の低層階の集合住宅と郵政公社の用地があった。また、南口は中野駅の正面になるが、バスターミナルが狭いため広げる構想があり、ノイビルの立地場所が、広場と交通広場になる計画である。中野駅北口には、バスターミナルはなく、南口のバスターミナルを広くすることで、利便性は向上するが、バス路線数は増加しない。吉田理事長は、都計審の委員でもあり、グランドデザインは、協議会で決められている。グランドデザインでは、中野駅を中心に中央線と中野通りで、南側が2丁目と3丁目に、北側が4丁目と5丁目に4つに区切られているため、動線づくりが課題となっている。北の4丁目の再開発では、線路上に駅ビルができて、サンプラザ前の通りがなくなり、バスターミナルができる。 再開発ビルの地権者は、共有を含んで11名になるが、地権者で住宅等へ入居した方は2名で、権利床で入居した。住宅等の管理は、住友不動産が行っていて、賃料は高くなっている。住友不動産は、床を持っていない。南口再開発事業組合が、一括で契約しており、区切ると小さくなるため共有で床を持っている。2月29日に竣工したが、住友不動産は、入居者を全部決めていない。保証金、礼金、家賃などの設定は安かったと考えている。

4.影響を受ける駅前商店街

 住宅棟の賃貸住宅の396世帯とコ―シャハイム(東京都住宅供給公社)の200世帯が商店街のお客になる。南口には集客施設がなく、日常品等の買い物は、北口のイトーヨーカドーやライフ・ブロードウェイやその地下の西友が利用されている。
 ノイビルの解体で、南口商店街の会員数は95名から80名に減少した。再開発ビルのオーナーとテナントの関係は、オーナーが、商店会に入会して、テナント(店)側がイベント等に参加する。今回の再開発で、大きく影響を受けるのが、中野通りと再開発ビルの間にあるファミリーロードになる。

5.イベントについて

 駅前の交通公園が完成したら、そこでイベントを行う。駅前では大きな音響を出しても問題にはならないため、駅前で人を集めて住居棟の東側の新しくできた広場に人を誘導する。東側の広場では、テントを張ってマルシェや桃の枝の配布などを行うことを考えている。
 中野南口駅前商店街では、コロナ前まで「もも」のイベントを行っていた。山梨県一宮町の人たちが、駅前で桃の枝を配っていたのが始まりで、今は笛吹市に合併していて、行われないようになったのを商店街が桃の枝を購入して配っていた。ワイワイ祭りでは、商品を500円購入すると200円の値引きを行う。子供向けのイベントでは、トランポリンやスーパーボールすくいが人気であった。
 中野区では「さとまち連携」という事業があり、甲州市が連携先になっていた。その関係で、無料招待のお座敷列車を200万円で仕立てて甲州市まで観光に行ったことがあるが、招待者150人の昼食の場所を甲州市の観光課に依頼したところ断られた。ブロードウェイ商店街の金子専務が石和市と関係が深いため、急遽訪問先を石和市に変更して、当地にあるメルシャンの工場を見学した。メルシャンでは、お土産用にワイン6本7,500円のセットを用意して、購入者には送料無料で自宅まで送った。参加者全員に「つきのしずく」とメルシャンのバウンドケーキが送られた。
 中野区は区民が、新宿に流れるのを食い止めるため、様々な施策を講じている。