ジョンソンタウンの視察

 商店街研究会の8月例会は、まちづくりとコミュニテイをテーマにジョンソンタウンの視察を行った。講 師には、一級建築士渡辺治、写真家森田城士、所長高畑啓子が講演やタウン内の案内を行っていただいた。

1.ジョンソンタウンの規模と歴史

 ジョンソンタウンの所在地は埼玉県入間市東町1丁目、敷地は約25,000u(約7,500坪)、建物は78棟 で内容は米軍ハウス23棟、平成ハウス39棟、その他16棟になる。 世帯数は130世帯、内店舗数は54店舗のなり、県外からの移住者は37世帯95人になる。 ジョンソンタウンの歴史は、昭和11年磯野商会が製糸会社の磯野農園として20万坪を取得することから始まる。昭和13年陸軍航空士官学校の将校用住宅として磯野商会が50戸を建設する。昭和20年太平洋戦争終結により陸軍航空士官学校を米軍が接収しジョンソン基地となる。昭和29年朝鮮戦争による基地増強により、米軍ハウス24棟建設する。昭和53年返還により、日本人向けに賃貸を行うが、荒廃化し、スラム化が進んだ。平成8年磯野達雄が兄から、磯野商会を引継ぎ社長に就任し、復興策の検討を開始する。平成14年渡辺治が、磯野商会から新米軍ハウスと米軍ハウスの改修とまちの計画を依頼される。平成15年平成ハウス1号を新築し、本格的に磯野住宅の再生とまちづくりを開始、以降、約16年をかけて米軍ハウスを改修、平成ハウス39棟を新築する。平成21年磯野住宅からジョンソンタウンへ改名し、商標登録を行う。

2. 米軍ハウス

 昭和24年朝鮮戦争勃発時に米軍基地を増強すべく、米兵の家の不足を補いために昭和28年に建築される。米軍ハウスは、GHQが建てたものと、高額な家賃を支払うことを前提に民間誘導型で建築されたものがあり、ジョンソンタウンは後者になる。GHQは、進駐軍住宅を建築させることで、日本の産業や経済復興や、新たな住宅産業による、日本の復興を意図していた。米軍ハウスは、建築を独学で学んだ建築家吉沢誠次氏のオリジナルティが生かされている。

3.平成14年再生とまちづくりに着手

 平成8年、現在の磯野達雄社長が、兄から磯野住宅の管理を引き受けたときは、住民は高齢化し、家屋は老朽化し、子供は1人もいなかった。平成14年アメリカ留学で田園都市に住んだ経験のある建築家渡辺治に協力を依頼する。「米軍ハウス」という文化遺産を改修、保全し文化的で魅力的な町並みを形成し、自由で創造的で、家族を大切にする気風を持つコミュニテイを作りたいと2人は考えた。その後、19年以上の年月をかけてまちの再生に取り組み続けている。

4.平成ハウス

 新たな標準住宅として、2階に住み1階を店舗にできる。住み続けられるまち、フレキシブルでな空間、高齢者も障碍者にも優しいバリアフリー、介護しやすい住宅である。暖房には環境負荷が少なく、生活環境重視の家づくり、夏の屋根裏換気、冬の床暖房、構造は2×4材を使った屋根、内装にはべニアが発展してできたOSB(間伐材などで作られる構造用合板)が使われ、平成15年に1号が完成し、その後38軒が造られた。

5.会話をつくる

 散策する経路のバリエーションを増やし、外ですごし、出会う仕組みを整えた。新たな街路を挿入し、地区に回遊性を持たせるため歩行者専用の街路(路地)が新たに設けられた、その街路沿いにポーチテラスや店舗を積極的に配置した。その結果、出会いや挨拶、会話となり住民同士の活動が活発に発展し、景観に活気を与えるようになった。家と家の間の路地空間は、厳格に残された。東西の路地はセミパブリック、南北の細い路地は、洗濯干し場や燃料置き場として、そこに電柱も移動された。店舗が開店することが許されないエリアの路地は、人が容易に侵入で着ないように、植栽のゲートを設け、緩やかな境界を設けている。

6.新たな生活スタイルと活動

 若者、高齢者、障碍者がタウン内で働きながら住めるまちになる。安心安全タウンからインクルーシブタウン(包括的なまち)へ、若い人たちが脱サラして夢を実現、2階に住みながら1階でお店を経営することができる。子育中の主婦が自分の夢をかなえるまちになる。リタイア後の高齢者が自分でやりたかったことにチャレンジしながら生活する居住者も現れ、生きがいと収入が得られるセカンドライフを送れるまちになる。障碍者も住み働けるまちになる。タウンは30年以上前から、社会福祉法人に障碍者用の居住用にアパートを賃貸し、法人のために街道沿いに「障碍者の就労継続支援施設」を建築した。その障碍者に植栽のメンテなどの仕事などを委託しており、障碍者が住んで働けるまちとなっている。

7.今回の視察について

 一般的に言う商店街の概念について、@空間概念としての商店街とA組織概念としての商店街がある。@の空間概念とは、一定の区間の中にある商業集積を指すが「ジョンソンタウン」は、これに該当する。Aの組織概念は、空間の中の商業集積の商業者が、組織的に経済活動を行う商店街の組織を指す。ジョンソンタウンはAには該当しないが、商店街は商業集積から始まる。

城西支部 鈴木 隆男