商店街が明日から実践できるビッグデータ(政府統計)活用術

 3月の商店街研究会は経済産業省製造産業局の田中幸仁氏を講師に招きオンライン形式で開催。商店街が明日から実践できるビッグデータ(政府統計)活用術をテーマに講演いただいた。  政府統計は国内有数のビッグデータである。今回は3つの観点で活用方法を説明する。

1.経営戦略への活用

  政府統計は経営戦略の判断に必要な天気予報である。業界の状況によって、会社にとって必要な取り組みは以下のように変わってくる。  拡大傾向の業界における黒字企業の場合、信号(経営状況)は「青色」であり、必要な取り組みは「設備投資」や「新製品開発」である。拡大傾向の業界における赤字企業の場合、信号は「黄色」であり、「社内課題の整理」が必要となる。 縮小傾向の業界における黒字企業の場合、信号は「黄色点滅」であり、必要な取り組みは「ニッチトップ戦略」や「新規事業」である。縮小傾向の業界における赤字企業の場合、信号は「赤色」であり、「コスト削減」や「事業譲渡、撤退」が必要となる。  環境変化の激しい時代だからこそ、政府統計活用の重要性が増している。「勘」や「経験」に加えて統計を活用して経営環境を把握する必要がある。特に緩やかな変化を把握するためには統計が重要である。

2.商圏分析への活用

 商圏分析についての明確な書籍やルールはない。一般的には自社に関係する地理的範囲の顧客やライバル企業の状況の分析を指す。製造業では物流がしっかりしていれば地理的影響はあまり受けない。一方サービス業、地域密着型のビジネスは商圏の影響が大きい。サービス業の不振の場合、サービスの質が悪いのか、ライバル店に顧客をとられたのか、あるいはそもそも地域の人口が減っているのか、データから原因を特定する必要がある。  総務省の政府統計ポータルサイト(e-Stat)を活用した学習塾の商圏分析事例を紹介する。e-Statでは国勢調査データを地域メッシュで表示できる。学習塾の対象である14歳以下の人口を視覚的に表示することが可能である。次に経済センサスのデータから教育学習支援企業の事業者数を抽出できる。これも地域メッシュで表示可能である。さらに地域の世帯所得や教育費支出も抽出できる。これらのデータから広告をどこで打てばよいか、新規に学習塾を開設する適地などを判断できる。

3.新規事業への活用

 リスクの少ない新規事業には2つポイントがある。一つは強みが活かせること。もう一つは拡大している分野の事業とすること。後者は統計から判断できる。  例えばコロナ禍で拡大している分野とは何か。2019年に比べて増加している分野を探すことになる。マスク、手洗い用品、テレワーク、テイクアウトなどである。手洗いを動作分析し、せっけんに着目するとする。こうした際に誰にでも、簡単に、無料で活用できるツールとして「グラレスタ」を紹介する。「グラレスタ」は経済産業省生産動態統計調査による1600種、10年間の鉱工業製品のデータをグラウ化するWebツールである。手順は3つのみ。手順1でキーワードを入力。手順2ではキーワードに関連する品目名を選択。キーワード関連の品目、「手洗い用液体せっけん」等が自動的に表示される。手順3で閲覧したい項目(生産数量、販売数量など)を選択する。以上で完了である。自動的に過去10年間の生産数量などがグラフ表示される。

4.その他

 経済産業省のYouTubeチャンネルでは、田中氏による統計活用セミナー等の動画を掲載している。オンラインであればセミナーもお受けしている。