論風これからの商店街の在り方について

 商店街研究会では令和3年4月の例会で、長年にわたり国などの施策決定や商店街支援に係わってきた大阪市立大学名誉教授石原武政氏を講師に迎え「これからの商店街の在り方について」ご講演を頂いた。今回この講演からコロナ後の商店街について考察を行ってみたい。

1.商店街はコロナ禍で変わるのか

 

 緊急事態宣言直後の小売業では、追い風のスーパー、コンビニと逆風の商店街に分かれ、商店街は「三密空間」と報道された。コロナ禍のスーパーでの買い物は、必要な物の購入だけで買物の楽しみが感じられずネットで代替できる。買い物のネット化が進むが、完全に置き換わることはない。店と顧客のリアルな関係はコロナが収束すれば復活する。

 

2. コロナ禍が教えたこと

 

 消費者は地元での買い物や消費機会を 増やし、地元の消費者に支持された商店 街、スーパーを問わずコロナ影響は軽微であった。近隣・地域型商店街は元々域外需要は少なく地域の消費者の日常の買物が中心で、それだけに地域社会との向き合い方が重要になってくる。逆にインバウンド来街などを含め域外需要が期待できた商業機能中心の商店街は大きな影響を受けた。コロナ禍の経験から、商店街が物の売買を越えて地域のニーズに全体として向き合うことの重要性は昭和59年のコミュニティ・マート構想(「買い物空間」から「暮らしの広場」へ)以来の課題が再度、見直される結果になった。

 

3.ムラ・コミュニティの変質

 

 コミュニティツールはアナログからデジタルに変わり商業空間は、出会い・交流の場から必要な物を手に入れる場へと変わった。商業と消費購買の関係は、地域商業者からチェーン店・ネット販売へ、消費購買の重要性は、誰から購入するから価格訴求型へとムラ・コミュニティは変質した。新たなコミュニティを「マチ・コミュニティ」と呼ぶ。ここでは、一定の狭い空間での存在共有、共通の課題・利害、日常的な会話、互いの私領域に深入りしないなどの繋がりとプライバシーの両立が必要になるが、このような共有関係はネット上では構築でない。ネット上では「場の共有」が欠けているため、ネット空間では仲間を作れるが、リアル空間でなければ出来ない事が多くある。

 

4.商店街の可能性

 

 商機能は商店街の重要な機能ではあるが1つの機能に過ぎない。商店街のコミュニティ機能をショッピングセンターも取り入れているが、まちには生活のために人が集まる場所が必要で、商業は人が集まるための必須の集積である。商店街は、商機能の担い手として地域の事業者を結ぶ「小さな流通」の担い手として地域の人びとを結びつける場の役割を果たす可能性を強くもっている。大企業が担う大きな循環は重要だが、商店街の商店が担う地域の小さな循環も同様に重要で、人と人とを繋ぎ、顔の見える関係を地域の中に埋め込んでいくことが必要である。

5.商店街支援の原点への回帰

 中小企業診断士が、商店街支援者として接する時の姿勢は、商店街をありのままの姿で理解、評価し、現場の商業者が何を悩んでいるのか、現場の商業者と一緒に考えることが重要である。

城西支部 鈴木 隆男