高松丸亀町商店街のエリアマネジメント事例から学ぶ  -商店街は未来の行政機能を果たしていく-

I コロナ禍が直面した商店街の現状

 コロナ禍を経験し、さらなるデジタル化の進展が、より一層、世代間の情報格差を広げてしまった。この状況で、地域コミュニティの拠点たる商店街は、隠れた課題が先鋭的に表れる。街の担い手は、今後さらに増えゆく街の課題を解消せねばならない。

U 街に必要とされる役割を果たす

 商店街研究会では、令和2年11月に、高松丸亀町商店街の古川理事長より、エリアマネジメントによる街の再生についてのお話を伺った。高松丸亀町の果たしてきた役割は数知れず、その全てをこの場で語ることはできないが、今回は、街の隠れた課題を解決する自治都市としての役割に注目する。 高松丸亀町商店街は、その主なターゲットを「高齢者層」「子育て層」としている。 高齢者層には、自宅と街にて生涯を過ごすための医療・健康設備を商店街が運営する。再開発により、商店街店舗の上には、高齢層に人気のマンションが併設された。 その住民は一歩外に出れば日々の買い物ができてしまう。商店街が運営するクリニックで日々の健康管理をし、同クリニックが監修するレストランで栄養管理された、「糖尿病の方向けのフルコース料理」を食べ、街のブティックでお買い物など、生涯健康に街で過ごせる仕組みができている。 子育て層は、商店街内の保育園に児童を預け、丸亀町のテナント周辺に働きにいく。 商店街が保育と働く場を兼ねており、ランチタイムに子供の様子を見に行く人もいる。 丸亀町では、若い世代は郊外で生活をするが、高齢になると丸亀町内に在住し、徒歩圏内で生活ができるよう設計されている。

V 収益事業を公益的事業に再配分

 丸亀町のエリアマネジメントは、ソーシャルビジネスの一面が強い。土地の「所有」と「使用」の分離により果たされた再開発により、収益事業の利益を、公益的事業に再配分するシステムを連年行っている。 今後商店街が生き残る道があるとすれば、このような「街」の課題解決を果たしつくすところにあると考える。地域独自での、住民による費用負担に応じ、地域内のサービスが受けられる。これは市町村単位で言えば、税収とその再配分の関係に近い。 丸亀町は他にも、健康管理できるジム、マルシェ、駐輪場、地域循環バスといったようなコミュニティ事業を実施してきた。街を遠方から利用する方には駐車場料金、在住する方には家賃という形で一定の負担を得ながら、その利益を再配分している。このような地域内経済循環(BID)は海外の街では多くなってきた。

W 課題解決可能な単位で街を捉える

 高松丸亀町商店街と同じことは困難にしても、課題解決を図る街区を再定義して、その解決に向かう組織作りは中小企業診断士が支援できる場面である。街を経営する原資と再配分を設計することで、商店街経営を果たすことは今後益々重要となる。  我々は支援先商店街において、今回得た知識を現場に還元するよう取り組んでいく。

城北支部 鵜頭誠