群馬県富岡市富岡 仲町まちなか交流館

1.富岡製糸場の世界遺産登録とその後

 仲町まちなか交流館で集合の後、まず始めに、2014年6月に世界遺産に登録された富岡製糸場およびその周りの歴史的建造物や当時の面影をしのばせるスポットを巡る「まちてくコース」の一部を講師の皆さんの案内で視察した。 3年前の2014年6月に実施した当研究会の視察が世界遺産の登録決定の直前であったこともあって、登録前と登録後のまちなかの変化を垣間見ることができた。 次に、市を挙げて実施しているインバウンド施策についての説明を受けた。 取り組み状況は次の通り。 @外国人観光客の動向を把握するために外国人マーケティング調査を実施。A製糸場に至る路地裏の道路を景観に配慮した街並みに調和したサインでもって改修を実施したこと、B工女たちの足跡をたどるをテーマにしたまちなか散策モデルルートを記した「まちなか散策マップ(富岡散歩)」を日英中語で作成したこと、Cデジタルサイネージの設置で観光情報を提供すること、D商店街の事業者を対象にインバウンド研修セミナーを実施したこと、E一括免税カウンターを市内2か所に設置したこと、F富岡製糸場を活用したウズベキスタンやフランスとの文化交流イベントの開催、G今秋に公開予定の映画『赤い襷』〜富岡製糸場物語〜を活用する観光プロモーションを行う、など様々な取り組みを実施している。 現状の観光客の推移は、世界遺産登録の前には年間3万人程度の観光客だったものが、世界遺産になった直後は144万人へと急増。ただ、その後は減少していき直近では70万人程度となっている。外国人観光客数については富岡製糸場の入場者数では2016年度に4,445人で、今年度見込みは5,000人を超える予想。ただ、実際にはもっと多いようである。

2.商店街活性化の取り組み

 世界遺産の登録直後には新たな出店してきた店舗が多くあったが、その後、撤退する動きが目立っている。というのは、富岡市内及び周辺には観光客を呼び込めるだけの規模や魅力をもつホテル、旅館がなく、観光客のほとんどは大型バスでやって来て富岡製糸場を見学し、次の場所に移動するという2時間弱の滞在時間の行動が大半であって、買い物や宿泊しての長時間滞在型ではないことから、消費に結びついていないということが影響している。  対応策として計画・検討している方策としては、@体験型の観光プランを設定して、滞在時間を伸ばす工夫、A富岡市の回りに多くある神社仏閣の魅力をアピールして、周遊型の観光を目指すこと、B電線の地中化による街並み改修工事でのまちなかの魅力づくり、C養蚕業の復活と絹製品の復活を目指して、民間数社が取り組みを始めていること、D空き店舗を活用しての移住の推進や、空き店舗を改装して観光客向けの和風民泊の実施検討、E海外向けのアピールとしては主として台湾からの観光客に焦点をあてたPR活動を実施、などを市、商店街等で検討・実施している。

 3.意見交流

  研究会の会員からは、都内商店街での民泊の事例やインバウンド対策としての各個店での免税手続の実施事例などを紹介し、意見交換を行った。富岡市の最前線で活性化に取り組んでおられる方々から生きた情報を得ることができ、有意義な研修であった。

 商店街研究会副会長 山中令士