ハードとソフトの事業に取り組む商店街-千束通商店街を視察して-

 商店街研究会では、4月26日(土)に東京都台東区の「千束通商店街振興組合」を視察しました。浅草中町会会館にて、内山峰三郎理事長から同商店街におけるアーケード改修のいきさつや、まちゼミなどの商店街活動についてお話を伺いました。

1.総額4億円のアーケード改修

 この商店街は550メートルの道路の両端に店舗が並ぶ直線型の商店街で、その上に片側アーケードがかかっているのが特徴です。他の商店街同様、こちらのアーケードも老朽化に伴い解体するか存続させるかで議論になりましたが、改修して存続することが決議され、平成18年に総額4億円の改修事業が始まりました。区との景観協定の締結による補助を得られたものの、その分担金負担は大きいものです。会員に対しては一括、年払い、月払いなど柔軟な支払方法を設けるなどして返済を続けており、近年のうちに完済される予定だそうです。

2.まちゼミへの取り組み

 内山理事長は近隣6商店街が連なる浅草北部商店街連合の会長を兼任されており、商店街同士で連携して桜橋花まつりに出店するなど、力を合わせてイベントに取り組んでいます。そのような背景もあり、昨年の9月には6商店街共同で、30店36講義による台東区初となる街ゼミを開催しました。理事長が経営されている眼鏡店でも「コンタクトレンズのお手入れの秘訣」「心地の良いメガネの取り扱い方」の2講義を実施しています。 期間は30日間でしたが、最初の10日目まではお客の反応がそれほど見えなかったそうです。そこから徐々に参加者も増えてきて、最終的には参加店はもちろん、参加者も喜ぶイベントになり、成功のうちに終わったそうです。

 意外だったのは、まちゼミへの参加を見守っていた様子見の個店からの反応で、他のイベントを行なった際に出てくるような批判的な意見が一切出てこなかったことだそうです。どんなイベントでも初めて行なう際にいきなり全部の個店の協力を得るのは難しいものですし、集客力の大きい行事を行なう際には反対意見も出てくるもの。全体的な肯定感が得られたのは、個店の努力により行なう商店の原点回帰ともいえるイベント、まちゼミならではの反応と言えるかもしれません。

3.内山理事長のご尽力

 商店街組織におけるリーダーにおいては、メンバー自体が商店主、1企業のリーダーですから、命令的なリーダーシップは通用しませんし、人同士の対立や利害の調整、会計のチェックも行なったりと仕事が非常に多岐にわたります。前述のアーケード改修やまちゼミを始め、多くの企画において組織を取りまとめ、多くの人や区、関係団体を巻き込んで事業を進められた内山理事長のご尽力は筆舌に尽くしがたいものだったはずです。次の総会をもって20年間務められた理事長職を終えられるとのことですが、前述のまちゼミに加え、バルや逸品会も頻繁に開催されるなど、若手やより多くの人を巻き込んだ新しいイベントも始まっています。内山理事長が先を見据えて取り組まれた活動がこれから先大きく花開き、多くの若者がその歴史をつないでくれることを願っています。

城南支部 盛澤 陽一郎