空き店舗活性化からアーティストとの共生の街へ − 「チャレンジスポット!鈴木荘」をきっかけに−

 商店街研究会では、7月26日(土)、墨田区向島の「鳩の街通り商店街」を視察しました。当商店街振興組合の理事長である松橋一暁氏と支援されている内田詠子診断士より、創業支援施設「チャレンジスポット!鈴木荘」の取組とその後の商店街についてお話をいただきました。

1.鳩の街通り商店街について

写真  鳩の街通り商店街は、東武スカイツリーライン「曳舟駅」より徒歩5分の位置にあり、水戸街道(国道6号)と墨堤通りを繋ぐ全長約300mの商店街です。昭和3年に設立された寺島商栄会から続く、長い歴史を持つ古い商店街であり、かつては水戸街道側入口に都電の終着駅があったことから多くの人通りがあり賑わっていました。しかし、都電の廃止、大型スーパーの進出などの影響や店主の高齢化によって廃業する店舗が次第に増加して、一般の住宅への建て替わりが目立つようになってきました。


2.チャレンジスポット!鈴木荘

 店舗の連続性が失われることへの対策のため、商店街の中ほどにある空きアパートを「チャレンジスポット!鈴木荘」として平成20年にリニューアルしました。これは 商店街振興組合が事業主体となって借り上げて、3年を契約期間として格安料金で賃貸する創業支援施設です。 商店街では生鮮食料品などの店に入居して欲しいという意見もありましたが、募集してみると若いアーティスト系の入居希望者が多く集まるという結果になりました。 現在の入居者は第三期となっており、商店街にとって大きな担い手になってきました。本年度からは鈴木荘の入居者が理事となり商店街運営に加わるようになるまでに至っています。

3.さらなる空き店舗活性化に向けて

 2月開催の「屋台ストリートsweets」は、空き店舗の前にお菓子販売の屋台を出店するというイベントです。これには2000人もの来街者が訪れました。しかし、このイベントの効用はそれだけではなかったと内田診断士は言います。「出店許可をとるために多くの家主を訪問したことを通じて、空き店舗自体の実態が初めて分かってきたのです。空き店舗数や家主が貸す意思を持っているかどうかなどを把握することができました。」また、イベントでは空き店舗内覧会も同時開催して、入居者を開拓する機会にもなっています。

4.アーティストとの共生

 鈴木荘の取組をマスコミが取り上げたことや都心に近いにもかかわらず家賃が安いことがあり、鳩の街通り商店街にはアーティスト系の出店の流れができつつあります。劇団員の夫婦が昭和2年築の古民家を改装したモダンなカフェ、元お茶屋さんをおしゃれに改装した無料休憩所など。 夕暮れ時には言葉に表現できない懐かしい昭和レトロな雰囲気が街を覆います。土日には、昨今ブームとなっている街歩きの来街者が訪れるようになり、鳩の街通り商店街は下町の隠れた観光スポットとして注目を集めています。

中央支部 佐々木 辰也