公道を活かしたオープンカフェについて―全国第1号で国の許認可を得た、商店街の景観づくり―

 商店街研究会では、12月13日(土)、新宿区の「新宿駅前商店街振興組合」を視察し、当商店街の専務理事である和田総一郎氏より、商店街区画内の公道を活かした、オープンカフェ空間の設立に至る取組及び活用の在り方についてお話を頂きました。

1.新宿駅前商店街振興組合の状況

 新宿駅前商店街振興組合は、昭和23年に「MOA商店街」としてその原形が発足しました。ここでは、「子連れのファミリー」「ミセス、サラリーマン」「大学生や様々なファッションをした若者」等、あらゆる層の人たちが商店街の前を通ります。ただ、通り過ぎるだけでなく、いかに商店街の店舗や空間を活用してもらうかが課題でした。 そのため、昭和59年に「MOA計画」を立て、公道でもある4番街に対して、景観にこだわった緑の空間を作り、電柱の地中化を行い、街の魅力向上を図りました。 しかし、このような空間が出来た当初は、居座るホームレスが出たり、違法駐車が後を絶たない状況となり、通りの治安が悪化したことから、徐々に通行者は減少していってしまいました。

2.ハード事業の成功は地域のハート

 この状況を打開すべく、同組合では、地域の消防署、保健所、区役所、都の第三建設事務所等と連携し、毎月、午前2回、お昼2回ずつ清掃活動を行ってきました。また、夜にも月2回、騒音パトロールを行ってきました。これらの事業は、清掃業者等への委託ではなく、日々商店主自らが主体で手を動かして行っていきました。このような動きは、徐々に様々な機関の応援を受ける形となり、広がっていきました。その結果、平成19年頃には違法駐車や放置自転車だらけだったMOA4番街は、平成27年には、若い女性やカップル、子育て層が集まる空間へと変わりました。現在は、国より2つの店舗の認可があり、そのクレープ店や休憩スペースに、買い物や観光に来る様々な人が集まってきています。

3.新宿特有の地域特性と向き合って

 同組合では、「SMAG」という連携体での情報共有を行い、(S=新宿、M=横浜元町、A=浅草、G=銀座)外国人対応策、ごみ問題や治安の問題等の悩みを共有し、対策を考えています。また、「イースト会議」と称し、新宿駅周辺の4つの商店街で集まり、地域の熊野神社の神輿担ぎなどの活動を行うなど、新宿地域での連携も活発です。 最近の活動では、岐阜県の美濃市から和紙の作品展を招き入れたり、7月にエイサー祭りを行ったりするなど、「子供たちに小さい頃から新宿に来てもらう」ことを次の狙いとし、様々なイベントを行っています。 治安問題等が心配された新宿への安全なオアシスの誕生は、地域商店街の店主達の賜物なのだと感じました。新宿駅前通りの取組には、引き続き目が離せなそうです。

新宿駅前商店街振興組合の区画
カフェスペースに集まるカップルや家族層

城北支部 鵜頭 誠