地域の期待に応えるコミュニティスペース活用について―上町商店会を一つに―

 商店街研究会では、10月19日(土)、埼玉県さいたま市の「上町商店会」を視察し、当商店街の会長である菅野勲氏より、地域の期待に応え、街を元気にしていく、コミュニティスペースの活用についてお話を頂きました。

1.上町商店会の置かれている状況

 上町商店会は、昭和30年代以降、自動車部品工場、修理工場、販売店などが集積する「自動車の街」として発展しました。 しかし、平成15年頃、近隣の自動車部品工場が撤退し、その跡地に大型GMSや大規模商業施設ができました。 このような状況を受け、商店会の会員数は、平成15年には42店舗あったところ、平成25年には30店舗まで減少しました。また、会員の高齢化と後継者不足も顕在化してきた状況です。 かつての工業地帯からマンション等が立ち並ぶ住居地域へと街が変わる中で、新旧の住民間や世代間のギャップが生まれたことで、住民からは、地域を再びまとめる機能が求められるようになってきました。

2.コミュニティ再構築の拠点を創設

写真 平成20年に、商店会の会員だったそば屋が閉店した際に、「この店舗と良好な立地を活かして、地域のためになる事業を行うことはできないか」という考えのもとで生まれたのが、「空き店舗を活用した、親子三世代が集えるコミュニケーション形成事業」でした。 上町商店会の通りは、かつては旧鎌倉街道に発達した古い街であり、近くには七神をお祀りする「与野七福神」と言われる寺社があります。この地域資源を活かしつつ、手打ちそば処のスペースを活かして、そば処「しちふくじん」が平成25年7月10日にオープンしました。運営は、商店街内で別のそば屋を経営する菅野氏と、その関係者数名で行っています。 そば処「しちふくじん」店舗前 コミュニティ施設であるそば屋として、高齢者や子育て層をターゲットにし、お店でそばの提供だけでなく、「新そば祭り」や「そば打ち体験教室」等のイベントを行い、地域の方々が触れ合う空間にしています。 また、地域発商品として、地域の有志を募り、「しちふくじんクッキー」等を販売し、地域資源を活かした地域ブランドづくりに取り組んでいます。

 

3.商店会を、地域を一つにするために

 会長の菅野氏は、「地域の拠点としての役割を担う施設として、現在、小学校などに向けて施設利用の案内を進めている」と話しています。上町地域の文化を発信する拠点として、周辺約1000戸に向け発信する町会回覧板にて「上町商店会だより」を発行し、同施設や各商店のPRをしています。 商店街の規模が縮小する中、町会や地域の学校、施設と連携して運営するコミュニティ施設は、今後も様々な動きを見せてくることになりそうです。

城北支部 鵜頭 誠