「まちゼミ」による商店街活性化事業 〜三方よしの“まちゼミ”とは〜

 商店街研究会8月度の例会では、話題の“まちゼミ”について、仕掛け人である岡崎まちゼミの会代表 松井 洋一郎 氏にご登壇頂き、まちゼミに取り組むようになった経緯や、これまでの経験から商店街で運営する際のポイントなどについてご講演頂きました。 松井氏は、化粧品販売店の商店主であると同時に、前述の岡崎まちゼミの会代表、株式会社まちづくり岡崎 代表取締役、内閣府 地域活性化伝道師、経済産業省 タウンプロデューサーの肩書きを持ち、日本中の商店街を活性化すべく日々活動されています。

1.まちゼミの誕生

 “まちゼミ”とは、『商店街の各商店が講師となり、予約制で各店の専門知識を受講者(お客様)に無料で講義、実技体験を提供する少人数のゼミナール』をいいます。(松井氏資料より) 大型ショッピングセンターの出店などで、商店街での店舗経営は厳しく、松井氏が営業されている岡崎市中心市街地の商店街でも、お祭りなどの様々なイベントを実施しても、仲間であった個店の商店主が次々と廃業してしまうなど、個店経営が立ち行かなくなる状況となっていました。 そこで、商店街活性化事業を、@商店街が周辺住民のお客様方からなくてはならない存在となること。A個店の売上アップにつながること。と位置付け、お店の存在・特徴、商店主のこだわり・人となりを知って頂き、信頼関係を築くことをねらいとして“まちゼミ”を立ち上げました。

2.三方よしの“まちゼミ”

 “まちゼミ”成功の要諦は、お客様・個店・商店街三方が、バランスよく満足する「三方よし」です。

  1. お客様:無料で知識が得られる、楽しい、満足。社会生活に必要なコミュニティのある街、商店街が近くに存在することは自身の環境にとっても有意義。

  2. 個店:お店を知ってもらうチャンス、新規・売上につながる。

  3. 商店街:買い回りにつながり、街の賑わい創出。お店とお店の連帯感が強くなる。

 以上が「三方のよし(満足)」です。 お客様が個店に来店する理由づけを増やし、結果として来街者も増加する取り組みとなっています。来街者を増やせば来店者も増えると考えた従来型のイベントとは一線を画しています。

3.“まちゼミ”実施に当たっての条件

写真  全国数十か所の“まちゼミ”を指導されてきた経験から、実施条件として数多くお話し頂きました。 中でも、運営主体を店舗主導で行う・補助金に頼らない姿勢や、参加店同士が勉強会等を開催し、常にブラッシュアップする意識が重要と強調されました。

4.今後の課題と感想

商店街が地域から求められる役割は時代とともに変化しています。生活用品を購入する商機能に加え、地域コミュニティの担い手としての役割・機能が求められています。“まちゼミ”は、地域住民と商店主の人同士のつながりと本来の商機能の両面から「生活の質」「心の豊かさ」を高めるもので、時代の要請に適った取組みと言えます。 全国各地で“まちゼミ”を実施する動きが広がっています。各商店街で、コンセプトを理解し、企画・実行できる人材を育成することが今後の課題で、中小企業診断士が関与する切り口ともなるものです。

城東支部 内田雅敏

 なお今回の講師松井洋一郎氏の教えを忠実に再現した都下で 開催されている「まちゼミ」をご紹介いたします。ちょうどJR立川駅南口を舞台に 10月1日から始まったばかりです。よろしければご参加ください。

立川南口商店街連合会街ゼミ

立川駅南口商店街連合会街ゼミ