商店街イズムが溢れるまちづくり  ―地域文化との異世代共存響声―

 商店街研究会では、3月17日(土)世田谷区の「下北沢一番街商店街振興組合」を視察し、当商店街の理事長である久保田秀文氏と理事の太田誠氏より下北沢流「まちづくり」のお話しをうかがいました。

1.下北沢地域の沿革

 昭和2年に小田急線、昭和8年に帝都電鉄(現井の頭線)の下北沢駅開業から商業集積が始まりました。当時は駅北側出口しか無く、下北沢一番街商店街を中心に賑わっており、先進的事業を積極展開していました。しかし、駅南口の開通により客足の変化が始まり、昭和後期に企業アンテナショップの南口進出ラッシュを機に下北沢地域の中心は一変しました。若者文化を育む下北沢駅周辺には約1000店舗が集積しており、4つの商店街で構成されています。

2.活性化の原点は地域文化

 地域の文化・伝統を後世に継承するため、対内的には「阿波踊り」「天狗まつり」、対外的にはライブハウスとコラボした「音楽祭」「演劇」などの商店街事業を通じて地域の子供達も密接に関わっています。当地域に住んでいて良かったとの思いを共有してもらうため、「異世代共存響声」をコンセプトに事業展開しています。 当商店街の周辺に誘引力ある商業集積地が点在しており、現状の賑わいに驕ることはありませんでした。商店街に湧き起こったムーブメントを、強みである地域文化に馴染むまちづくり構想へ発展させたのが特徴です。単独による商店街事業では、地域生活者を軸足としながら他地域から来街者を継続して取り込むには限界があります。共通の強みを有する地域商店街だからこそ連携によるまちづくりを可能にしたのです。

3.商店街イズムをまちづくりに

ハッピーロード大山商店街 とれたて村 まちづくり事業の運営母体として、商店街イズムを継承した株式会社を当商店街100%出資により設立しました。平成23年度地域商店街活性化法の認定を受け、当商店街事務所建物をオープンスペースに改装することで、街全体の活動交流・情報発信拠点の核となる新産業創造インキュベーター施設「しもきた・オープンイノベーションタウン」を開設しました。 当施設で実施するソフト事業として、1)「しもきたフレッシュ市」による地方産品の展示販売、2)「寺小屋感性いちばん塾」による幅広い年齢層に対応した感性を磨く講座、3)「お宝人材発掘プロジェクト」によるエンターテナーの地域を元気にする活動、4)「しもきたオープンイノベーションTV」によるUストリームを活用した街の魅力情報の紹介を実施しています。事業初年度の成果として、地域文化をベースに面としての回遊軸を形成し始めたところです。

4.今後に向けて

 個性的な店舗の誘致を狙い、今年度から「しもきたコンシェルジュ」「しもきたブランド開発」プロジェクトを展開する予定です。さらに、空き店舗を活用した「トライアル店舗」事業に繋げていくことで、下北沢らしい個性溢れる街区を演出されるでしょう。久保田氏の推進する「訪れてみたいと思う選択肢に残るまちづくり」は、商店街の新たな活路を示すことになりそうです。

城南支部 鈴木 恒雄(のぶお)