ずっとしもたか(下高井戸)」の街づくり ―地域住民がずっと住み続けたいと感じる生活基盤を提供する―

 商店街研究会では、5月16日(土)世田谷区の下高井戸商店街を視察し、同商店街振興組合理事長前田勝弘氏、専務理事石井健夫氏より、「下高井戸商店街の活動概要と街づくり構想」についてお話を伺った。

1.振興組合設立と商店街の概要

下高井戸商店街 もともと隣接する6つの商店街が1つになって下高井戸商店街振興組合となった。その為、京王線を挟んで世田谷区と杉並区を跨いでおり、当初は、縦割り行政に悩まされる苦労もあったが、調整努力により、現在は商店街を一体の街と認めてもらい、一緒に「街づくり」を行っている。 商圏は、新宿から京王線快速で3駅目の「下高井戸」駅前にあり、1次商圏(500m圏)には、約1万8千人の人口を抱えている。商店街加盟店舗はエリア内店舗の約90%の255店舗である。

 

2.商店街としての取り組み施策

 当商店街は、先進的な各種取組みを行っている。施策例は、次の通りである。

  1. ステーション:1階が商店街の案内所と休憩所、イベントスペース、2階が会議室のステーションを振興組合が保有しており、商店街や地域の情報発信基地+公共的サービスの拠点+組合活動の核としての機能を持たせている。

  2. 店舗マップ:商店街の店で可能なサービス・特徴を同一条件で比較し5冊のカタログ〔@飲食店、A食料品店、B日用雑貨店、C美容と健康関連店、D暮らしのサポート店関連店〕を作成して配布し、消費者が知りたい情報を提供している。

  3. 街路灯:3月にリニューアルし、従来の水銀灯より省エネ仕様のインバータ蛍光灯にし、上端にソーラーパネルを組み込み、震災等による停電時でも、フットライトのLEDが点灯するようにして、街路を歩く人への安全を確保している。

  4. 宅配サービス:個店で宅配サービスを実施している店が13店舗ある。また、商店街として「手ぶら便」という宅配サービスも行っており、商店街内だけでなく、新宿などで買い物したものでも、自転車で自宅まで配達を実施している。

  5. スタンプ:導入して15年目となり、年に1回のDMの発行により年間行事を連絡し、誕生月や母の日、敬老の日、年末年始などに交換比率をアップしたり、特定のサービス品や映画鑑賞券と交換できる等、工夫を凝らしている。

下高井戸商店街

3.今後のまちづくり構想

 当商店街でも、商業環境や地域住民の商店街への期待やニーズの変化、店舗や生鮮市場の老朽化に対応すべく、新しい街づくりの必要性が高まっている。そこで、その構想案を、東京都中小企業振興公社から派遣された中小企業診断士や専門家の支援のもとで作成した。街づくりのイメージは、「日常的で生活感を重視した、人が集い交流や賑わいと活気あふれる商店街」の実現である。コンセプトは、「@賑わい、Aふれあい、B安全・安心、C豊かな食、D歴史と文化、Eゆとり、がある街」である。

  今後、京王線の立体化に伴う、駅前再開発も予定されており、商店街が、事業者との街づくり協議会へ参加し、地域の中核的存在として、街づくりをリードしていく。中小企業診断士として、今後も目が離せない商店街である。

報告者:小澤栄一