地域資源活用とやさしい商店街づくりの新たな取り組み  ―松陰神社通り商店街―

 12月1日商店街研究会は、松陰神社通り商店街の視察を行う。同商店街は松陰神社の参道に形成され、昭和25年に任意団体として設立、昭和63年振興組合に改組、正栄会商店街(振)となる。店舗数は約150店舗、物販店中心の近隣型商店街で、街区は約450メートル、平均幅員は6メートル、歩車道区分のない道路である。世田谷通りから環状7号線への抜け路として通過車両が多く、はみ出し看板や商品のため歩行環境が悪化していた。同商店街の一連の取り組みは、これからの商店街のあり方の一つの方向性を示しているためその経緯を記す。

1、商店街の地域歴史資源の活用

 商店街の近くに幕末の志士・吉田松陰を祀った松蔭神社があることから、商店街の活性化策として、山口県萩市に着目。商店街交流事業援助資金を得て、平成3年10月に世田谷区職員と当商店街役員が萩市を訪問。平成4年から本格的な交流を開始、名称も松陰神社通り正栄会とする。萩市内の商店街との交流と萩市、萩商工会議所・観光協会・物産協会など全面的な支援を得て、平成4年10月に第1回「萩・世田谷幕末維新祭り」を開催。平成19年、幕末維新祭りは16回目を迎えた。

 

 

2、都福祉のまちづくり特区モデル事業

 平成14年、障害者外出介助研修を実施、障害を持つお客に対する接客技術を学ぶ。平成15年度、やさしい商店街づくり行動計画等をまとめ、2店舗の入り口バリアフリー改修実施を行なう。やさしい商店街宣言を幕末維新祭りで行い、看板・商品の路上はみだし自粛運動などやさしい商店街づくりを目指して活動を行う。これらの取り組みが評価され、平成16年7月「東京都福祉のまちづくり特区モデル事業」に指定された。17年度より3年間でバリアフリー環境整備を進めていくことを決めた。

3、やさしい松陰神社通りまちづくりの会

 誰もが安心して買い物でき、人と人の自然な交流・触れ合いが生まれる商店街は、バリアフリーとの考え方から、平成16年9月、地元国士舘大学や市民、NPOなどと「元気でやさしい松陰神社通りまちづくりの会」を発足。平成17年、街区を3区分して段差のないやさしい道路整備工事を開始。平成18年、ユニバーサルデザインの視点を盛り込んだ「元気でやさしい商店街マップ」を制作、商店街各店頭で配布した。

4、元気でやさしいまちづくりに向けて

 平成19年3月、街頭サインや段差排除、点字ブロックなどが商店街通り全域で完成、ユニバーサルデザインの商店街づくり完成記念イベントを開催。毎月行なわれる街づくり協議会で具体的な活動案が決められ、広報部で作成した「まちづくり通信(3,000部)」で告知される。これらの地域団体と連携した活動は直接売上増に寄与する物ではないが「やさしい商店街」として地域社会から認知されることが重要である。課題は@若干のはみ出し陳列、A駐輪問題の解決、B公衆トイレがない等である。

報告者: 鈴木 隆男