世田谷駅前商店街振興組合の地域連携型活性化事業 -地域の文化遺産、ボロ市・代官屋敷を生かして-

 商店街研究会では、11月8日(土)、ボロ市で有名な世田谷駅前商店街振興組合を視察しました。当日は、国の重要文化財である代官屋敷にある世田谷区立郷土資料館で、理事長の安藤敏次様から、商店街の活性化事業についてお話を伺いました。

1 世田谷駅前商店街とボロ市  

世田谷駅前商店街は、東急世田谷線の世田谷駅から松蔭神社前駅までの世田谷通りを中心とした会員数約130の商店街です。ボロ市は、世田谷駅前商店街振興組合と隣接のボロ市通り桜栄会商店会や地元町会などが組織する「せたがやボロ市保存会」が主催しています。約430年の歴史をもち東京都の無形民俗文化財にも指定されています。毎年、1月、12月の15・16日に4日間開催され、700店以上が出店し、来場者は多い日には25万人になるそうです。

2 ボロ市・代官屋敷界隈商店街活性化まちづくりプロジェクト

 大変な賑わいを見せるボロ市ですが、普段の日の商店街は、近隣にスーパーができて生鮮3品の店がほとんどなくなるなど、様子が一変します。振興組合では、ボロ市の1%の賑わいを目標に様々な活性化事業に取組んでいます。ボロ市通り桜栄会商店会と連携して東京都の地域連携型モデル商店街事業の指定を受けた「ボロ市・代官屋敷界隈商店街活性化まちづくりプロジェクト」では、ハード整備事業として、江戸情緒を醸し出す黒の格子壁や木看板、瓦屋根によるファサード統一事業と、「桜門 世田谷代官お膝元」と記したボロ市会場の入口を示す街路灯の門柱(写真)を設置しました。ソフト事業では、双六仕立で地域の見所と商店街の店舗を紹介する「世田谷代官お膝元マップ」を約3万部作成しています。このマップには逸品認定店に指定された30店の逸品も掲載されています。

3 地域と連携した活性化事業

写真  この他にも、この振興組合と商店会に上町銀座会商店会を加えた3商店街共同企画の「せたがや代官お膝もと“食”の総選挙」を実施しています。お客様が応援する店に投票する催しで、応援理由を参加店舗にフィードバックもしています。10月には、東急、京王、小田急電鉄など企業の協力を得て、東急世田谷線の三軒茶屋から下高井戸まで、まち歩きしながら沿線のお店の商品を無料で試食する「世田谷線つまみぐいウォーキング」を実施しました。このイベントには11商店街、79店舗が参加し、当日は約2,000人が参加しました。  さらに、駅とコラボレーションして、600人から800人の参加を得て年4回の清掃活動を行うクリーン作戦や、昭和女子大、国士舘大など5つの大学のゼミと連携した商店街をテーマにしたプレゼン発表会も実施しています。


 

4 決めたことは3か月以内に実現

 世田谷駅前商店街振興組合の活性化事業の特徴は、他の商店会や町会、企業、大学など幅広い連携により、地域的な広がりを持った事業を展開していることです。そのことにより、1商店会ではできない規模と多彩な事業が可能となり、さらに大きな賑わい創出につながっています。また、イベントの実施に際しては、個店への還元にも配慮されています。こうした取組が実現したのも、安藤理事長の強いリーダーシップがあったからです。「理事会で決めたことは3か月以内に実現する。」という理事長の言葉にその行動力が端的に表れています。理事長のアイデアはまだまだ尽きないようで、今後の展開と成果が楽しみです。

中央支部 村山 正一